術中覚醒をしたらどうなってしまうの?術中覚醒したケースってあるの?
およそ0.2%の確率で術中覚醒は起こると言われています。術中覚醒とはどのようなものか見ていきましょう!
術中覚醒とは
全身麻酔中の予期せぬ意識回復のために手術中の記憶が残ってしまい、手術後にも手術中の記憶を想起できてしまうことを言います。
術中覚醒は、手術中の医師や看護師の会話が聞こえるといったものから、術中に痛みを感じるというものまで、様々な種類があります。
術中覚醒の記憶のせいで術後、よく眠れない、悪夢をみる、うつ状態になるなど、いわゆる心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状がでる場合があります。
術中覚醒が起きてしまう原因
患者さんの意識が無い状態を保つために必要な麻酔量はかなり個人差があります。
そのため、麻酔科医は血圧・心拍数などをたよりにして、個々の患者さんにとって適切な麻酔量を投与するように調節しています。
しかし、麻酔薬の多くは血圧を下げて心臓の働きを抑制する働きがあるので、外傷に対する緊急手術や、重い心臓病を持つ患者さんの手術などでは、手術中に十分な麻酔量を投与できない場合があるのです。
これが術中覚醒が起きてしまう原因の一つです。
実際の術中覚醒のケース
診断的腹腔鏡検査を受けた44歳の女性のケース
腹腔鏡検査の際腹部内を観察するために、患者さんの腹部に器具を挿入するための切込みを入れます。執刀医は腹部を調べる際に患者さんの内臓を動かすなどするため、当然全身麻酔は必須です。
この女性は術中覚醒をしてしまった
ガチャガチャという音や、モニターなどの機器が動いている音が聞こえて、女性は手術が終わった後なのに騒がしいなという印象を持ったそうです。
執刀医の「メス」という言葉に血の気が引きました。手術はまだ終わっていなかったのです。
周りの人に覚醒したことを伝えることはできない
麻痺剤が聞いているので、動けないし、目も開けることはできませんでした。麻痺剤は腹部の手術では一般的で、腹部切開時の筋肉の抵抗を無くすために使用されます。
不幸にも、全身麻酔は効いていないのに、麻痺剤は効いていたのです。
術中の記憶はトラウマもの
この女性は術中に、執刀医がこのように言ったのが記憶に残っています。
「虫垂を見て。とてもいい状態だしピンク色だ。大腸も良い、卵巣も良い」
女性は精神的外傷を受け、病院に対して裁判を起こしました。
参考:bbc.com
全身麻酔薬の作用機序は未だによく分かっていない
全身麻酔薬はどの受容体に作用するのかなど、メカニズムが判明していません。
例えば、モルヒネなどの鎮痛薬はオピオイド受容体に作用して「痛み」の感受性を下げるという原理が判明しています。
そもそも、全身麻酔薬のターゲットである「意識」や「記憶」のメカニズムが判明していないので、仕方がないのかもしれません。
まとめ
術中覚醒をした患者さんの4~5割は重度の心的外傷を負うというデータもあります。自分が術中覚醒をすることを想像するとゾッとしますよね。術中覚醒が起きた患者さんの心のケアは重要な問題です。